どこに売り込むべきか?2  連載第5回 00/12/14

前回に引き続き、他の売り込み先を紹介。


●広告代理店(使A アB 金特A)

業界に詳しくない人にとってみれば「どんな仕事をしているのかさっぱりわからない」というのが広告代理店(略して代理店)。しかし実は、イラストレーターによってはこの「広告代理店」こそが最も売り込みに重点を置きたい業種である。なぜなら、ギャラの相場が高いからだ。
広告代理店は企業の宣伝・広報部門を代理する業種だ。テレビコマーシャル、電車広告、企業向けパンフレット、PRポスターなど「誰が作っているのかよくわからないデザイン広告」の70%は「広告代理店」の手によるものだと思って良い(残りをデザイン事務所と印刷会社で分ける)。
広告代理店は顧客(クライアント)の「この商品を売りたい。三十代男性がターゲットになる」などといった要請を受け、決められた予算内で効果的な宣伝を展開していくのが主な仕事だ。電通、博報堂をはじめとする「総合代理店(テレビ、電車、雑誌広告から、オリンピック広報活動、遊園地イベント企画など、あらゆる事柄の宣伝・広報窓口と成り得る企業)」などは、大手一流企業から、数十〜数千万単位(時には億単位)の仕事を受注する。当然、イラストが必要となった場合のイラストレーターへの予算割り当ても雑誌などとは桁が違う。
※売り込みポイント

広告代理店は最もイラストを必要とする業種だ。顧客(クライアント)の様々な要望に応えるため、利用するイラストも多種多用。「常にいろいろなタイプのイラストレーターを抱えていたい」という要望も強い。
代理店連絡先は電話帳などで探せるが、何らかのコマーシャル(テレビ、電車、雑誌広告)を見て興味を持った場合は、少々手間はかかるが直接クライアントに問い合わせた方が良い。代理店の名は表に出ることがないので、どのコマーシャルをどの代理店が扱っているかはわかりにくいからだ。
例えばある「結婚相手紹介会社(結婚相談所)」の電車広告にあなたが興味を持ったとする。その場合まずクライアントである「結婚相談所」に電話し、
「山手線の御社広告を見てお電話したのですが、宣伝、広報担当の方をお願いします」などと言う。通常、宣伝または広報という役職の者が代理店との窓口になっているからだ。
用件、氏名を尋ねられたら、正直に、
「私はイラストレーターの○○ですが、御社広告に興味を持ちまして、お話を伺いたいと思っております」などと言って良い。
そして、窓口担当者までたどり着いたら、これも正直に、
「私はイラストレーターの○○と申します。山手線内の○○の広告を見て、イラストの提案をしたくお電話いたしました。同広告制作の担当の方とお話したいのですが」などと言う。そこで代理店の名が出たら必ず、連絡先、制作担当者の名も聞いておく(ただし、印刷会社、デザイン事務所、または自社で制作している場合もまれにある)。後は、該当の代理店に「○○社広告制作担当の××さんをお願いします」と電話をかければ良い。
「広告代理店」を名乗る企業は多数ある。規模もピンからキリまでで、社員数百人の大企業から社長一人の所までと様々。
大手(総合)代理店はイラストレーターにしてもコピーライターにしてもすでに多くの大家と付き合いがあるので、新人が採用されるためのハードルは「大企業への就職」に匹敵するほど高い。また下請けのデザイン事務所に任せてしまう場合も多い。しかし可能性はゼロではないから、自信のある人は是非ともチャレンジしたい。
中堅から小規模の代理店も仕事内容は同じだが、規模が小さくなるほど、新人採用の確率は高くなり、下請けを介する可能性は低くなる(ギャラの相場も下がる)。

●ミニコミ誌・タウン誌(使C アA 金C)

ショップやレストランにさりげなくおかれておたり、都会の街中で無料で頒布されていたり、家のポストに投げ込まれたりする。目にしたら、編集部連絡先をメモしておこう。どの誌面もデザインを重視しており、イラストやカットもたくさんある。
※売り込みポイント
ミニコミ誌やタウン誌を発行しているのは、若い小規模な企業(組織)が多い。新人イラストレーターでも上手ければ採用してくれるが、ギャラの相場は安い。

●フリーペーパー(使C アB 金C)

ここでいうフリーペーパーとは、個人で発行しているものではなく、企業が宣伝を兼ねて発行しているものだ。レコードショップやファッション系のショップなどで、企業系のフリーペーパーが置いてないか確認しよう。
※売り込みポイント
レコード会社のフリーペーパーにしても、実際に発行しているのは小規模な企業が多いから、売り込みは楽。

●通信教育会社(使B アB 金B)

通信教育の資料にも挿絵やカットが使われている。
※売り込みポイント
意外と規模は小さいから、制作責任者に直接売り込もう。

●デザイン事務所(使A アB 金C)

イラストを扱うデザイン事務所は、出版社から本の表紙カバーなどの装丁を頼まれている所や、広告代理店などから印刷物のデザインを依頼されている所だ。建築デザイン、意匠デザイン、ファッションデザイン関係会社もデザイン事務所と呼ぶので間違えて売り込まないように注意。
企業組織として運営されている事務所もあるが、個人で行っている場合も多い。
※売り込みポイント
規模の小さい所が多いので、見つけるのは結構大変だ。あなたがある程度の仕事を重ねていくうちに出会うことになるかもしれない。
編プロと同様に、雑誌の頁デザインや一定の企業広告の仕事を確保している場合が多いので、営業は事務所にお任せで良い。ギャラ、クレジットの問題も編プロと同様。

●印刷会社(使C アC 金B)

中堅以上の印刷会社では印刷や製本だけではなく、デザイン部門を設けて企業の頒布用の資料の制作などを請け負っていることもある。また、自費出版本の制作を受注している印刷会社では、イラストを必要とする機会もある。
※売り込みポイント
デザイン事務所と同様。

●ゲーム制作会社(使A アA 金A)

商品そのものがイラストの塊と言って良い。才能のあるイラストレーターを常に求めている業界でもある。
※売り込みポイント
門戸も大きく開かれているから、売り込むのはたやすい。ただし、今、最も繁栄している業界だけあって競争も激しい。CGができないと相手にされない可能性もある。
注意をしなければならないのは、イラストレーターもアルバイトや契約社員のような形で雇用する形態が多いことだ。フリーで絵だけを買ってくれるケースはあまりないので、その辺の確認は必ず行うこと。

●その他

デザイナー向けのイラストライブラリーや素材用CD-ROMを制作している会社やイラストレーターを派遣している人材派遣会社などがある。

 

連載第1回「売り込みとは?(6/23)」を見る

連載第2回「イラストレーターの役割(7/19)」を見る

連載第3回「売り込み前の準備(8/21)」を見る

連載第4回「どこに売り込むべきか?前半(10/24)」を見る

ここまでは準備。
次回は売り込み開始!

 

トップに戻る