○ イラストレーターと営業活動
あなたはイラストレーターという仕事の中の「営業活動」を、どのように位置づけているのだろうか。
「私はクリエーターだから、大事なのは創作活動。営業活動は二の次だ」などと考えている人がいたら、今すぐ認識を改めるべきだ。
余程の大家であったり、余程のコネがない限り、ただ黙々と「創作活動」をしているだけで仕事が来ることはない。自らの才能を仕事に結び付けるには、「営業活動」を同時に行わなければならないのだ。
つまりイラストレーターという職業においては、創作活動と営業活動は密接に関係している。「営業はすごく得意だが、絵は描けない」というイラストレーターは有り得ないわけだし、「絵はすごく得意だが、営業はできない」というイラストレーターも有り得ない。これはライターもカメラマンも同様であり、個人で仕事を得ていく職業を選んだ者は「営業」に重きを置く必要がある。イラストを趣味にとどめず、「自分はイラストレーターだ」と名乗るのならば、「創作活動」と「営業活動」を1対1の比率で行うくらいの考えでいたい。
しかし、意識せずにこれを行っている人は多い。「友人、知人にイラストを見せる」、「イラストを見やすいようにファイリングする」、「コンテストに送る」、「パーティに出席してコネを作る」なども営業活動の一環である。
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売り込みとは営業活動の第一歩である
「売り込み」とは営業活動の一環であり、仕事を得るための第一歩である。すなわち、直接、客(編集者、プロデューサーなど)と交渉し、「私を使ってください」と訴える活動である。「出版社回り」、「持ち込み」、「営業」などと呼んでいる人もいる
「売り込み」は最も有力、かつ重要な営業活動だ。
1.直接相手の反応を確かめることができる
2.特に資金を必要としない
3.思い立ったその日に行うことができる
などと利点も多い。
また例を挙げるまでもなく「無名の新人が売り込みを機に華々しく活躍する」といったことは、クリエーターの世界では珍しい話ではない。
つまり「売り込み」を効果的に行えるかどうかで、仕事を得られるかどうかは大きく変わってくる。
現在、挿絵執筆などで活躍中のイラストレーターAさんはこう語る。
「同期で専門学校を卒業した友人に、『自分は技術があるのに仕事がない。運が悪いのとキャリアがないせいだ』と愚痴をこぼす奴がいますが、僕は間違っていると思う。僕たちは無名なんだから、いくら技術があっても誰も声なんて掛けてくれませんよ。そいつに仕事がこないのは明らかに売り込みを軽視しているからです」
いくら技術や才能があっても、仕事がなければ「イラストレーター」とは言えない。逆に多少粗削りであっても仕事をこなし、様々な人と接する過程で技術やキャリアを磨いていき、大成していく人もいる。むしろ「売り込み」を自分をレベルアップさせる方法と捉えたい。
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制作現場は売り込みを待っている
「売り込み」を「難しいもの」「相手にとっては迷惑なもの」と考えるのは損。なぜなら、制作現場の担当者も「いいイラストレーターはいないか」、「こういうカットを描ける人はいないか」と常に探しているからである。
「どこの現場でも常に新しい才能を求めているんだけど、他の仕事が忙しく、新人の発掘までは手が回らないのが現状です。だから他のメディアで活躍している人やコンテストの優秀者など、手っ取り早く実績の分かる人に依頼してしまうことが多い。本音を言えば安いギャラでしっかり仕事をしてくれる『これからの人』が売り込んでくるのを待っているんですよ」とは広告代理店勤務のB氏。
つまりイラストレーターにおける「売り込み」とは、訪問セールスと同様で、商品(作品)が魅力的であれば、ニーズは必ずあり、タイミングが合えば購入(採用)されるわけだ。時には嫌な顔をされることもあるだろう。しかし、喜ばれることもある。だから「売り込みをやってもいいか迷っている」という考えは捨てよう。むしろ「業界は私が売り込むのを待っている」と考えたい。
連載第2回「イラストレーターの役割(7/19)」を見る
連載第3回「売り込み前の準備(8/21)」を見る
連載第4回「どこに売り込むべきか?前半(10/24)」を見る
連載第5回「どこに売り込むべきか?後半(12/14)」を見る
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